TPP交渉参加問題について

 

 環太平洋戦略的経済連携協定いわゆるTPPは、今後の日本の経済、国民の生活に大きな影響を及ぼすことが懸念されることから、全国市長会を通じて、特に慎重な対応を求めてきたところです。
 しかし、参加によるメリット、デメリット等、情報提供も説明も不十分で、国民の議論も尽くされないまま、11月11日、野田首相が交渉参加を正式表明し、その拙速な対応には大きな疑問を持ったところです。特に、農業分野においては、食料自給率低下や食品の安全性問題など多方面からの議論にもっと時間をかけるべきだったというのが率直な感想です。また、東日本大震災と福島第一原発事故による放射能被害など、県内でも農畜産業が大きな打撃を受けているこの時期に、さらに関税撤廃で海外の安い農産物が入ってくることは、農家や農業団体のみならず、大きな不安材料です。
 一方、輸出関連企業をはじめとした中小企業団体、経営者団体等の経済界からは、経済連携を進める上で問題もありますが、自由貿易で受ける恩恵は大きく、メリットも多いと歓迎する声が聞かれます。最近の円高と景気の低迷で、中小企業でも海外進出が増加するなど、産業の空洞化を食い止める効果も期待されているようです。
 TPP交渉の対象分野は、関税の原則撤廃にとどまらず、貿易や投資のルール、知的財産など全21分野に及ぶものです。このため、農業以外でも医療分野では、医療保険制度への影響、混合診療の解禁、企業の医療参入などによる医療格差・地域の医師不足の拡大などの不安が多く、さらに食の安全、地方経済への影響など、多くの課題があるものと考えています。
 米国やオーストラリア、南米、東南アジアといった既存の交渉参加9カ国は、12月13日までハワイで開かれていたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議を機にTPPの大筋で合意し、これに、日本、カナダ、メキシコが交渉参加を表明したことで、もし実現すれば世界経済の4割を占める巨大経済の連携が話し合われます。日本の正式な交渉参加は、今後、既存の交渉参加9カ国と協議して承認手続きが必要なことから早くても来春の見込みで、参加後の交渉も各国のさまざまな課題が山積しており、TPPの最終合意にはかなりの時間と紆余曲折が予想されています。
 栃木県は、全国有数の「ものづくり県」であり、本市もその一翼を担う企業が立地しています。一方、農業分野でも栃木県は全国的に大きな地位を占めており、特に本市における農業の位置づけは、まさに「基幹産業」と呼べるものです。
 このため、市では、政府のTPP交渉参加協議の行方を注視しますと共に、市長会を通じて「国益を十分に勘案し、国民的合意を得た上で、慎重な判断と対応」を要望していきます。特に、農業分野における対応、食料自給率確保の手立て、公的医療保険制度の扱いなど、市民の利益を十分勘案し、国や県に対して適切な対応を強く求めていきたいと考えています。