有限会社ひらつね (30代Uターン後継ぎ インタビュー記事)
※有限会社ひらつねの記事は、魅力発信事業で作成したものではありませんが、那須烏山市が類似事業で作成したものにつき、南那須地区雇用協会が譲り受け掲載しています。
30 代 U ターン後継ぎ インタビュー
有限会社 ひらつね (那須烏山市金井2-11-21)廃棄物処理業
平野達朗さん
論文のつづきは実践で!地域における中小企業の役割とは?
廃棄物処理・リサイクル業に誇りを持って、まちへの関りを考える。
那須烏山市内で鉄スクラップや非鉄金属の買い取り、リサイクル、廃棄物処理業を経営する「有限会社ひらつね」。
那須烏山市(旧烏山町)に 1951 年創業。こちらの4代目となるのが平野達朗さんです。
一度地元を離れて大学と大学院で経営学や都市計画を学び、再び那須烏山市へ戻ってきました。現在(2018 年3月時点)、商工会青年部副部長でもある平野さん。今回はそんな平野達朗さんへインタビューさせていただきました。
プロフィール
栃木県那須烏山市(旧烏山町)出身。慶應義塾大学総合政策学部卒業、千葉大学大学院修了後、日本政策金融公庫(旧中小企業金融公庫)へ勤め、その後家業を継ぐため地元へUターン。
有限会社ひらつねの4代目として日々、仕事に励む。那須烏山商工会青年部副部長も務めており、また仕事のかたわら「さんかくサロン」を主宰するなど地域活動も積極的に行っている。
有限会社ひらつねでは、どのような仕事をしているのでしょうか?
主に金属加工をする製造業から出る金属のスクラップを回収・分別・加工して、そのスクラップを原料に
鉄鋼製品を作っている製鉄会社へ納めるまでの仕事をしています。
会社の自慢、イチオシ、こだわりは何ですか?
大手にはできない、中小だからこそできる柔軟な対応ですね。
お客様の需要に柔軟に対応できる。それがイチオシですね。昔からの信用やつながりを活かした対応ができることころ。
小さい会社ながらも天井クレーンやシャーリングといったマシーンなど設備が揃っているので一通りの需要にはお答えできます。
地元へ戻ってきた経緯を教えてください。
大学に進学するにあたり、東京へ出ました。経営学を勉強したいという想いがありまして。このときはなんとなく漠然と将来、家業を継ぐのかな?くらいだったと思うんですけどね。
大学へ進んで経営学を学んでいたのですが、元々地方自治にも興味があってその分野の講義も専攻履修していました。そのころちょうど平成の大合併もあり、自分の地元(旧烏山町)も地名がなくなるかもしれない、どうなるのかな?と町の在り方なども気になりまして。
地方自治も学んでいるうちに、都市計画にも関心が出てきまして。学んでいるうちにその楽しさに気づきました。これはもう少し都市計画やまちづくりを研究したいたいなと思って、大学を卒業した後、千葉大学の大学院に進みました。
大学院では地域計画学研究室というゼミで都市計画の中でも地域計画を学んでまして、そこで『中小企業とまちづくり』というテーマに出会ったんです。中小企業だからこそ果たしうる地域への役割。都市計画やまちづくりにおける「中小企業」の存在意義って?ということころに注目しまして。
今までにも「企業」がまちづくりに果たす役割というのはあるけれど、「中小企業」に特化した研究ってあまりなかったんですよね。
地域社会における中小企業ってどんな存在・位置づけなのかな?と。それで、ゼミの研究として『中小企業が地域社会において果たす役割』というテーマで一冊の論文にまとめました。
おもしろいテーマですね!すごい論文ですよね。分厚い!!研究への熱量を感じます。
研究では地元の中小企業の社長とかにインタビューや聞き取りもしました。夏休みなどに帰ってきたときに話を聞かせてもらったり。今でもその社長さんには仕事の面でも大変お世話になっていまして、まさかその当時には将来お客さんとしてお世話になっているとは思ってもいなかったですが(笑)
この『中小企業が地域社会において果たす役割』というテーマに大学院で出会って、中小企業にかかわること、産業にかかわることが改めておもしろいと気づきました。大学院の教授からも「ここまでやったんだから、実家に戻るんだろ?」と問われて、自分でもそうだよなと。自分が地元に戻って、今までやった研究を通した目線で地域づくりとかまちづくりに関わっていくのが一番自然なのかなと思いまして。
そんなことを漠然と考えつつ研究と同時並行で就職活動をしていて、たまたま縁あって中小企業向けの融資に特化した政府系金融機関に入社しました。
様々な産業の発展に間接的ながら関わることのできる中小企業金融の現場でその面白さや使命感にやりがいを見出しつつも、取引先の社長さんや同僚と話していたりするとやはり家業のことが頭の中にチラついてきまして、4年間金融機関に勤めてそれから地元に戻って来ました。
中小企業が果たす地域への役割、興味深いです。研究したことを今まさに実践中といったところですね!
外に出たからこそ分かったこのまちならではのことってありますか?
昔はほんとにかなり栄えていたエリアだったんだなと。裁判所とかあったし、法務局もあったし。NTT もあったし。歴史の蓄積を感じますね。それを改めて感じました。昔はバイクメーカーの工場があったとことから、関連する製造業も多かったし、自動車整備工場も多いですよね。飲食店とかお菓子屋さんとかも多い。理美容院とか。
良く悪くも独立心が強いのかなと思いますね。
確かに今の人口割合に比べて飲食店も多いと感じますし、整備工場も多いです。昔栄えていた面影は残っていますね。
では、事業を通して分かったこの地域ならではなことはありますか?
金属加工の会社が集積しているなと。そのおかげで弊社も成り立っている。そういった地域の特殊性、産業の特殊性を感じます。
あと、昨年からリサイクルBOXの設置を始めたのですが、不法投棄とかあるかなと思ったんですけど、深刻な不法投棄は1,2件くらいしかない。なので、この辺の地域のマナーはいいなと感じました。地域性なのか、人口の年齢構成的にそうなのか、地元に愛着があるのか、そこは分かりませんが、ここに住む人のマナーは悪くないなと。由緒ある城下町ならではのプライドのようなものが知らず知らずに刷り込まれているのかなと勝手に感じていたり。それは事業を通して分かったことですね。
子どもの頃と比べてまちの変わったところは?
街並みはかなり変わりましたね。どんどん空き家が増えて取り壊されている。
自分が小学生前後のころは、逆の意味で(活気が出る)変わっていってたんですよ。
山あげ会館ができたり、郵便局ができたり、真っ平らな土地に急に工事が始まっていろいろ近代的な建物が建設されていって。たいらや(スーパー)なんかもその頃できましたし。今と反対ですよね。逆の意味で風景が変わっていました。
簗も減ってしまいましたね。那珂川にいくつもあったのですが、今は一つになってしまったし。
企業の数も減っている。特に製造業の会社が減っている印象を受けますね。以前はこの辺りは金属加工業が多かったのですが。例えば、ここ10年くらいで製造業の数も150社から120社くらいに減っている。20%減っていますね。企業の数が減るということは、産業活動で出る廃棄物も減っていくので、うちの仕事も成り立たなくなってしまいます。
逆に変わらないところはどんなところですか?
人は変わっていないですね。東京から戻ってきての第一印象はそれでした。自分が小さい頃にお世話になった人たちの元気な姿は変わってないなと。前と変わらずに声をかけてくれたり。お祭りもずっとその時期に変わらずやっている。取り巻く環境は変わったかもしれないけど、祭自体は毎年必ずやっている。そこは変わらないですね。
平野さんの仕事に対する思いを聞かせてください。
お客さんの「廃棄に関する困りごと」に対して、よりタイムリーに対応できるような体制を整えていきたいです。
普段なんとなくなあなあで溜めてしまっている物や、処分の仕方が分からなくて放置しているゴミとかあるじゃないですか。それってちょっとしたストレスですよね。そういった困ったなぁというときに「あ!ひらつねがあるよね」とすぐ思い出してほしい。困りごとに常に応えられるように、皆さんの助けになれればいいなと。『こういった物はひらつねでも対応できますよ』とか、むしろこちらから先に処分の仕方や知識を提案できるようにしていきたいですね。
ゴミを処分できた!なくなってよかった、スッキリした!といふうになるように。それを一般家庭でも企業でも提案していきたいです。
ひらつね自作のニュースレターも2か月に1回のペースで発行して配っています。今は取引先企業向けに資源にまつわる情報や廃棄物に関する知識や会社の近況などを定期的にお届けしています。
顔が見える企業を目指しているので、こういった物を発行することはお客さんとの関係づくりにもなるかなと。
あと、このニュースレターも弟と一緒に作っているので、これを作ることによってお互いの情報交換や事業
の方向性のすり合わせの場にもなっています。
うちはお客さんの生産活動あってこその仕事。
廃棄物(ゴミ)があってこそ成り立つ仕事なんですよね。こちらからあえてゴミを作れとは言えないじゃないですか。
だから製造業の会社さんに生産活動を頑張ってもらわないと。生産活動が続いてくれないと弊社の仕事も続いていかない。共存共栄ですね。企業さんにとってプラスになることは弊社もやってあげたい。適切な分け方を提案すれば、今まで100%ゴミだったものが、50%はやはりゴミだけど残り50%は資源でリサイクルできたりする。そうすればゴミ処理にかけるコストも減らせますし、適切な分け方をすればゴミも資源になります。
価格だけで勝負するところには負けたくない。
いいとこどり(お金になるところだけ持っていく)の会社とは事業ひいては社会に対するスタンスが全く違うので負ける訳にはいかない。リサイクル事業は社会的に必要なところを握っている。社会的な責任、職業倫理は強く持ってやっていきたいです。そこがないと社会的に淘汰されても仕方ない。鉄くず屋っていうとどうしてもホコリや油にまみれることも多く、昔から「3K」と言われて下に見られがちな分野ですが、だからこそプライドを持ってやっています。
そこは誇りを持ってちゃんとやっていく。こっちに帰ってきてからは特に「社会に必要とされている存在になりたい」と思うようになりました。
産業活動の汚い部分や負の部分を見るのは小さい頃はとても嫌だったんですけど、仕事として関わって面と向かって見るようになって考えが変わってきた。産業活動が続く以上は、誰かがやらなきゃいけない。
どうせやるなら廃棄物がリサイクルの流れに乗ってちゃんと次にいくように、ひらつねがそのバトンを渡せるように、プライドを持ってやっていきたいです。
ゴミってみんな敬遠しがち。見たくない部分だし、そこまで深く考えたくないところですよね。それを知恵を絞ってデザイン(見える化)して分かるようにしていきたい。それができるのは携わっている当事者である我々です。そういう啓蒙的な活動も地域社会に対する中小企業の役割なんじゃないかと思うんです。
鹿沼市や宇都宮市に「まちゼミ」という取り組みがあります。街の事業主が自分の商売の得意分野をお客さんへワークショップなどで見せたりする活動なんです。事業主が背景も調べて分かりやすく情報を見せていく。お客さんも今まで知らなかった知識を深めることで、ちゃんとしたものを買いたくなる。自分もそうやって地域に関わっていけたらいいですね。
みんなが敬遠しがちな分野だからこそ、しっかりプライドを持ってやる。凄く大事なことですね。
最後に、平野さんが今後やりたいことを聞かせてください。
一つは、兄弟けんかをしないで会社を発展させていくこと。
よく周りから、兄弟でやるとうまくいかない、とかそのうち喧嘩するよって言われるんですけど、そこをくつがえしたいですね!!
弟とこれからも仲良く事業を続けていく。創業100年を目指して、兄弟で盛り立てていきたいですね。
あとは論文をこの那須烏山の地で完成させたいです。烏山をケーススタディにして論文の続きをまとめる!実践してまとめる!
自分が商工会に時間を割いて関わっているのもその延長なんです。商工会という場に、自分が大学で学んだことや前職で得た金融に関する知識、そして現在携わっているリサイクル分野の情報提供をして、地元の中小企業に競争力を持ってもらい生き残ってもらうための手助けを微力ながらする。その積み重ねが街の産業の維持発展につながればと思っています。
一生かけて探求できるライフワークが見つかった、という面では地元を離れて大学に行ってよかったなと思います。
自分の研究を地元に還元できるかもしれないことにやりがいと誇りを持っているので、これからも実践と探求を続けていきたいです!
毎日やっていることが研究の実践の場となっているんですね。中小企業が果たす地域への役割が何なのか、論文の続きを楽しみにしています!
インタビューを終えて
今回取材して、産業廃棄物処理・リサイクル事業がこんなに深い事業なのだと分かりました。
中小企業がまちへどういった役割があるのか、自分のやっている事業でどんな関わりができるのか、それを研究し、地元である那須烏山市で実践しており、改めて地域にとって凄く貴重な方だなと思いました。
机上の空論にせず、自分が研究をしたことを実際に地元で実践し、ライフワークとして探求し続けていくという平野さんの姿勢。
この「30 代・Uターン・後継ぎのインタビュー企画」も実は平野さんからご提案をいただき実現しました。
普段、街中でもお会いすることもあるのですが、今回初めて作業着&ヘルメット姿を拝見し、とても新鮮でかっこよかったです。
埃にまみれて働く慶応ボーイは、心も「誇り」にまみれていました!
平野さん、お忙しいところお時間いただき、本当にありがとうございました。
今回取材に応じてくださった有限会社ひらつねの詳細はこちら
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- 2022年7月21日
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